私たちの多くは楽しむために蜂を飼っているのだし,‘扱いやすさ‘を失った蜂群なら簡単に処分できます.しかし蜂群に有罪宣告をするまえに,飼養についての自分の習慣や扱い方にそもそもの原因がなかったか,以下の項目などを十分に検討するべきでしょう.
- ● 巣枠を入れ替えたり取り除くときにハイブツールを正しく使っているか?
- ● 燻煙器を適切に使っているか?ツンと鼻につくような煙や熱すぎる煙がでているのでは?
- ● 巣箱の内検を寒すぎたり,風が強いときに,あるいは雷が来そうに蒸し暑いときにしていないか?
- ● 貯蜜に盗蜂がくる危険がでるほど,巣箱の蓋を長い間開けっぱなしにしていないか?
- ● 芝刈り機や草刈り機,フェンスのくい打ち作業の振動と廃棄ガスが蜂を警戒させているのでは?
- ● スズメバチや盗蜂が巣箱に侵入しているか?
- ● 女王蜂がいない?蜂病が蔓延している?
- ● 周囲に蜂を脅かすものがいるのでは?捕食者が来ているのか,風の通り道でいつも風が吹いているか,あるいは近くの高圧線用鉄塔から磁気干渉があるのか.
- ● 蜂群の貯蔵食糧は十分あるか?
- 食糧不足で飢えた蜂群はきわめて防御性が高くなります.かつて私は養蜂初心者から蜂がとても荒いと助けを求められました.彼は春の蜜を絞った後に,蜂児巣箱に十分な貯蜜があるか未確認.はたして貯蜜は全くなく,飢えた蜂群は激怒.私たちは蓋を閉め,手近な避難場所を探しましたが,トゲのあるセイヨウサンザシの生け垣に潜り込み,蜂の攻撃が止むのを待つしかありませんでした.
- ● 養蜂家が香水をつけているか,乗馬したばかりなのか,芝刈り作業で汗をかいたところか?
- 紀元一世紀のローマ帝国で,造園・養蜂・養魚・畜産・農場経営など12巻からなる大著「農事論」を著したルシウス・コルメラは蜂の扱いと匂いについて,こう書いています.「蜂を管理し給餌する立場のものには大いに注意深い行動が求められる.巣箱に触らねばならないときは,その前日から性行為を慎み,禁酒して身体を洗う.強い匂いや刺激的な悪臭をもつ食品,たとえばニンニクやネギ,その類のものは一切口にするのを控えるように」.