ポリネーターにより十分な送粉が行われると,成長調整ホルモンが生産され,これが果実の品質と生産量の向上に結びつきます.この現象は花粉媒介に依存する複数の果実や蔬菜種でも同じようにみられるもので,ドイツの研究者たちが見いだした統合的な結果は,より多くの幅広い種類の作物にも当てはめることが可能でしょう.
日本の農業でも野生のポリネーターが少なくなり,それを補う働きができるミツバチの活躍があります.ミツバチは主にイチゴなどベリー類やメロン,スイカなど瓜類の花粉交配につかわれ,カボチャ,ヒマワリ,ソバとの相性も良いです.さらにリンゴ,ナシ,ウメ,オウトウ,カキなどでも利用され,奇形果防止,作物の形が整う,増収,省力化などの効果が認められています.タマネギやキャベツの採種や花の種を採るための利用も増えてきました.
イチゴを用いたドイツの研究は,ミツバチによる花粉交配の効果は果実の品質向上に不可欠であり,商品としての経済的価値にも重要な決定要因であることを示しています.日持ちが良く,より長い賞味期限をもつことで,果実の廃棄を少なくとも約11%減少させました.先進国では生産された作物の30-50%が小売りや消費者のレベルで廃棄されてしまいます.賞味期限の長い,優良な作物の生産はその無駄を減らす方策となります.
この論文は次のようにまとめています: 主要農作物の約7割は昆虫などの動物の花粉媒介に依存する.これらの作物にポリネーターが与える利益を総合的に分析したところ,この生態システムサービスの経済的価値の推定を増加させることが明確になった.送粉生物による花粉媒介サービスは従来の理解よりも遙かに重要であり,それを行う生物を護るため,適正な農業手順と農業政策による支援は強化されなければならない.