columnひとみの本棚

おだやかな陽ざしの中、元気に飛び戻ってくるミツバチの羽音を巣箱のそばで聞いたことがありますか? ミツバチやその他のハナバチ類は、日本はもとより世界の多様な自然の中で、その環境を保全し、人々の暮らしを豊かにする働きを担っています。
「Harmony on Diversities」いろいろな植物と動物が、本来のいき方をつづけ、豊かに持続的に、響きあいながら命をつないでいける環境。ミツバチもそんな環境を求めています。ヒトとの関わりがどの昆虫よりも長く多様な、ミツバチとその養蜂について考えてみましょう。

榎本ひとみ
アジア養蜂研究協会(AAA)設立時より21年間事務局コーディネーターを務め、アジア各国(オセアニア、中東を含む)で1994年より隔年開催された大会の準備などで、各国関係者と交流、多様な養蜂事情を学んだ。現在は役員。またAAA会報「Bees for Development Journal」や玉川大学ミツバチ科学研究センター発行の季刊誌「ミツバチ科学」などを通じて、欧米の関係組織とも交流、国際養蜂協会連合(APIMOMDIA)国際養蜂会議に数回出展、参加した。

12月26日, 2020年

北米オオスズメバチ騒動 その1

 今年11月にアメリカのマスコミは「殺人スズメバチ」がアジアから侵入したと,センセーショナルに報道しました.この騒ぎの原因,オオスズメバチ(英名 Asian giant hornet, 学名Vespa mandarinia)は世界最大のスズメバチ種で,もともと温帯,熱帯東アジアの山岳地と森林地に生息しています.日本にも分布,あなどれない危険な昆虫であることは,以前から知られています.

 はじめにスズメバチの生活環を確認するため,日本の専門家小野正人先生がNHK解説ブログにあげた「スズメバチの生態を知ろう」から引用します.
夏から晩秋に,人が「スズメバチ」に刺される事故がおき,社会問題化しています.厚生労働省の調査で,1980年代から近年まで,毎年約20名もがハチによる刺傷で死亡,そのほとんどがスズメバチによるものです.刺傷事故は秋に集中しますが,スズメバチの巣造りは,4月下旬から5月にかけて,越冬を終えた1匹の女王バチによってひっそりと始められます.
巣造りの当初は女王バチしかいないので,最初の小さな働きバチが羽化するまで,巣造り,産卵,育児,外敵防御をすべて1匹で行います.働きバチの成育に成功すると,女王バチは巣にとどまって産卵に専念,7,8月にかけて巣は急成長し,働きバチの数が数十から数百匹へと跳ね上がります.その頃には,幼虫の育てられる巣盤の数も増加し,巣はマンションのような階層構造になります.9月にはいると,来年女王バチになる新女王と配偶者のオスといった生殖虫が生産されます.その頃にはちょうど,働きバチの数も最大となり,餌集めも巣の防御も万全の状態です.巣に刺激を与えるものには容赦なく,多数の働きバチが毒針を使った激しい防衛行動を示します.10~11月下旬にかけて新女王バチとオスは次々に巣を離れ,それぞれ異なる巣で育った配偶者と結ばれます.新女王バチはオスから受け取った精子を腹部の受精のうにため込んで,朽木や土の中に入り込んで越冬し,春の到来を待つのです.