columnひとみの本棚

おだやかな陽ざしの中、元気に飛び戻ってくるミツバチの羽音を巣箱のそばで聞いたことがありますか? ミツバチやその他のハナバチ類は、日本はもとより世界の多様な自然の中で、その環境を保全し、人々の暮らしを豊かにする働きを担っています。
「Harmony on Diversities」いろいろな植物と動物が、本来のいき方をつづけ、豊かに持続的に、響きあいながら命をつないでいける環境。ミツバチもそんな環境を求めています。ヒトとの関わりがどの昆虫よりも長く多様な、ミツバチとその養蜂について考えてみましょう。

榎本ひとみ
アジア養蜂研究協会(AAA)設立時より21年間事務局コーディネーターを務め、アジア各国(オセアニア、中東を含む)で1994年より隔年開催された大会の準備などで、各国関係者と交流、多様な養蜂事情を学んだ。現在は役員。またAAA会報「Bees for Development Journal」や玉川大学ミツバチ科学研究センター発行の季刊誌「ミツバチ科学」などを通じて、欧米の関係組織とも交流、国際養蜂協会連合(APIMOMDIA)国際養蜂会議に数回出展、参加した。

5月31日, 2021年

Honey + matcha

 今やあらゆる食べ物・飲み物に抹茶味が登場していますね。アメリカのナショナルハニーボードが、matcha/抹茶を解説しました。米国ではまださほどなじみがありませんが、健康にとてもよいという切り札を持っての登場です。コロナ禍で人々が健康に大きな関心を持つ日々、ハチミツも砂糖より健康によいと選ばれています。Honey + matchaでヘルシーに!抹茶についてちょっと、振り返ってみましょう。

写真はタイのチェンライで展示された健康増進をうたうミツバチ生産物製品。抹茶入り新製品も出てきそうですね。

抹茶は普通の緑茶と同じくチャノキ(ツバキ科ツバキ属)の葉から作られますが、特別な栽培法と加工法があります。収穫の20-30日前から直射日光を寒冷紗で調整。葉は薄く柔らかになり、クロロフィルが増え、アミノ酸含有量も大きく増加、葉は緑の色合いを深めます。手摘みされた新芽はすぐに蒸して乾燥。つづいて精選、ブレンド、さらに乾燥。こうして準備された茶葉全体を細かくひいて、超微粉末の抹茶が完成。それを飲み物、スイーツなどの材料として、まるごと摂取するので、茶葉が本来持つ多様な健康増進力がより効果的にあらわれるようです。肝臓、心臓を守り、脳を活性化、体重を減らし、体の管理を支援すると米国の健康サイトは述べています。

抹茶のメリットについて日本はもとより多くの研究が行われていますが、特に明らかなのが抗酸化作用。ほかのタイプの緑茶に比べて137倍ものカテキンを含みます。カテキンは天然の抗酸化物質として作用し、有害な活性酸素を安定化させて、細胞へのダメージを防止、また慢性的疾病の危険を低下させます。カフェイン含有量も抹茶はほかの緑茶より高いのです。このカフェインが脳の機能を活発にし、とくに集中力、反応速度、記憶力を増進します。まだまだ抹茶の利点がありますよ。抹茶にはL-テアニンというお茶のうまみや甘味におもに関与するアミノ酸が含まれ、カフェインの興奮作用を緩和、リラックス効果や睡眠の質を高める効果をもたらします。

第二次世界大戦前の時代ですが、10歳くらいだった私の母は父親のお供でゴルフ場に行きました。ゴルフ場のレストランで冷たくて甘いグリーンティーという摩訶不思議なものを飲んだことを、強烈に記憶していて、私に話してくれました。抹茶を洋風にアレンジした先駆けだったようです。

ストレスの多い現代社会に抹茶はまさにうってつけ。ハチミツと組み合わせて、各地で多様に利用していただきたいですね。