columnひとみの本棚

おだやかな陽ざしの中、元気に飛び戻ってくるミツバチの羽音を巣箱のそばで聞いたことがありますか? ミツバチやその他のハナバチ類は、日本はもとより世界の多様な自然の中で、その環境を保全し、人々の暮らしを豊かにする働きを担っています。
「Harmony on Diversities」いろいろな植物と動物が、本来のいき方をつづけ、豊かに持続的に、響きあいながら命をつないでいける環境。ミツバチもそんな環境を求めています。ヒトとの関わりがどの昆虫よりも長く多様な、ミツバチとその養蜂について考えてみましょう。

榎本ひとみ
アジア養蜂研究協会(AAA)設立時より21年間事務局コーディネーターを務め、アジア各国(オセアニア、中東を含む)で1994年より隔年開催された大会の準備などで、各国関係者と交流、多様な養蜂事情を学んだ。現在は役員。またAAA会報「Bees for Development Journal」や玉川大学ミツバチ科学研究センター発行の季刊誌「ミツバチ科学」などを通じて、欧米の関係組織とも交流、国際養蜂協会連合(APIMOMDIA)国際養蜂会議に数回出展、参加した。

7月14日, 2019年

養蜂作業の友 燻煙器 その3

 燻煙器からは低温の白い煙が出てほしい.強い熱風が吹き出されたら,ミツバチの翅,体毛/剛毛,それに触角が焼けてしまう.
 米国農務省・農業研究サービスで1997年にバロアダニに対する燻煙の効果をしらべた興味深い試験が行われている.40種の植物のバロアダニに対する防除効果を試験したもので,もっとも期待できそうな植物は乾燥させたグレープフルーツの葉とクレオソートブッシュ(多年生木質植物)だった.

 この研究の概略は:「USDA(米国農務省)ARS(農業研究サービス)のテキサス州ウェスラコ分所所属のフランク・アイシェンは40種の植物のバロアダニに対する防除効果を試験した.もっとも期待できそうな植物は乾燥させたグレープフルーツの葉とクレオソートブッシュ(多年生木質植物)だった.クレオソートブッシュの煙は研究室内の実験で1分後にケージに入れたミツバチから90-95%のダニを追い出した.グレープフルーツの葉の煙は30秒後に90-95%のダニを追い出した.この発見は初期的段階の試験結果で,さらに試験を積み重ねてからでないと,研究者が養蜂家にダニ対策として,これら植物を燻煙に使うよう推奨するわけにいかない.」
 詳細は次のアドレスで公開されている.
https://agresearchmag.ars.usda.gov/1997/aug/mitesmoke)
 気をつけてほしいことは,クレオソートブッシュとグレープフルーツの煙はあなたのミツバチに有害かも知れないという点だ.ちょうど煙草の煙がダニ対策に有望と一時騒がれたが,蜂に良くないと分かったように.
 適正に燃えている燻煙器を携えて作業すれば,蜂の扱いがより容易に,楽しいものになる.燃焼缶の底部に点火し,しっかり燃え始めた火元を確保したら,燃料を燃焼缶にぎっしり詰め込む.これがポイントだ.こうすればあなたの燻煙器は作業途中で立ち消えすることなく,多量の低温で白い煙を出し続けることだろう.具合良く燃えている燻煙器なら,蜂を制御するためにほんの一吹きか二吹きで十分な効果を得られるのだ.