4月,5月と連続で英国の養蜂雑誌Bee Craft の 蜂場で役立つ技術シリーズより,2022年8月号に掲載されたアン チルコット(スコットランド認定養蜂技術者 beelistener.co.uk)の「荒い蜂群の扱い方」をお届け.今月はその対策についてです.
適切な時期と防護用具をえらぼう
慢心の危険はだれにでもあります.高名な研究者が養蜂家の一団を引き連れて,シーズン終盤のスコットランドヘザー(ヒース)群生地を訪れました.地元民ならもちろん,この時期のミツバチが相当怒りっぽいことを熟知しています.
ある尊敬すべき来賓に(うっかりして)穴が空いた面布がわたされ,ミツバチはその穴をすぐに発見しました.面布などは蜂場でのおしゃれ装備で,自分には不要なアクセサリーだと豪語した来賓もいましたが,あっというまに両腕を振り回しながら走って逃げ出す仕儀となりました.
女王蜂を変える
防御的な蜂群の気性をほんの数週間で,あるいはもっと短期のうちに和らげることは可能です.女王蜂を変えて異なる遺伝的特性を導入しましょう.ただしそれでも荒い性格が変わらず,こちらが挑発しないのに攻撃してくるようであれば,それは養蜂家や公共への危険となりかねません.速やかに対策を講じます.
危険な蜂群を破壊する
蜂群の安楽死は残酷に見えるかも知れませんが,その巣箱の設置場所,通行人の危険など多くの要素を考えると,もっとも安全なやり方なのだとおもいます.
日中に上置き巣箱を取り除き,夕刻,外勤蜂の帰巣後に巣門を閉めます.メッシュの開放式底部のときは下にはダニ用トレイを差し込み,巣箱を締め切ります.ガソリン1/4パイント(約0.14リットル)を巣枠の上に置かれたクラウンボードの開口部から蜂児巣箱に流し込みます.このとき熱い燻煙器が近くにあればガソリン引火の危険が大きいので十分に注意を.数秒のうちに音が止んで,蜂がもう死んだとわかります.養蜂家は翌朝に戻ってくれば,ガソリン臭が消えているので,巣箱の後片付けできるでしょう.
蜂群を移動する
蜂群を隔離された別の蜂場に移すことも考えられます.ですがこれは単に問題を移動させるだけであり,元々蜂群の気性を荒くした原因がその環境にあった場合以外は,適切な選択肢と言えません.
蜂群を分割する
大きな強群は防御性を極端に高める場合があり,シーズン開始時には小さくておとなしかったものが建勢するに従ってその性格があらわにします.強群を分割していくつかのヌックスに作り替えるのは良い対策です.とくに旧女王蜂を廃して,各小群によりよい性格の女王蜂から生まれた新女王を入れると良いでしょう.(訳注:ヌックス,またはニュークリアススコロニーとは大きな蜂群から分割して作られた蜂の小群をいう.通常サイズよりも小型の巣箱=ヌックスハイブに入れられて,それぞれに女王蜂も加わる.)