columnひとみの本棚

おだやかな陽ざしの中、元気に飛び戻ってくるミツバチの羽音を巣箱のそばで聞いたことがありますか? ミツバチやその他のハナバチ類は、日本はもとより世界の多様な自然の中で、その環境を保全し、人々の暮らしを豊かにする働きを担っています。
「Harmony on Diversities」いろいろな植物と動物が、本来のいき方をつづけ、豊かに持続的に、響きあいながら命をつないでいける環境。ミツバチもそんな環境を求めています。ヒトとの関わりがどの昆虫よりも長く多様な、ミツバチとその養蜂について考えてみましょう。

榎本ひとみ
アジア養蜂研究協会(AAA)設立時より21年間事務局コーディネーターを務め、アジア各国(オセアニア、中東を含む)で1994年より隔年開催された大会の準備などで、各国関係者と交流、多様な養蜂事情を学んだ。現在は役員。またAAA会報「Bees for Development Journal」や玉川大学ミツバチ科学研究センター発行の季刊誌「ミツバチ科学」などを通じて、欧米の関係組織とも交流、国際養蜂協会連合(APIMOMDIA)国際養蜂会議に数回出展、参加した。

5月08日, 2023年

超防御的な蜂群の対策 その1

4月,5月と連続で英国の養蜂雑誌Bee Craft の 蜂場で役立つ技術シリーズより,2022年8月号に掲載されたアン チルコット(スコットランド認定養蜂技術者 beelistener.co.uk)の「荒い蜂群の扱い方」をお届け.今月はその対策についてです.

 

適切な時期と防護用具をえらぼう

慢心の危険はだれにでもあります.高名な研究者が養蜂家の一団を引き連れて,シーズン終盤のスコットランドヘザー(ヒース)群生地を訪れました.地元民ならもちろん,この時期のミツバチが相当怒りっぽいことを熟知しています.

ある尊敬すべき来賓に(うっかりして)穴が空いた面布がわたされ,ミツバチはその穴をすぐに発見しました.面布などは蜂場でのおしゃれ装備で,自分には不要なアクセサリーだと豪語した来賓もいましたが,あっというまに両腕を振り回しながら走って逃げ出す仕儀となりました.

トルコの大規模コーカシアン女王蜂養成場にて

女王蜂を変える

防御的な蜂群の気性をほんの数週間で,あるいはもっと短期のうちに和らげることは可能です.女王蜂を変えて異なる遺伝的特性を導入しましょう.ただしそれでも荒い性格が変わらず,こちらが挑発しないのに攻撃してくるようであれば,それは養蜂家や公共への危険となりかねません.速やかに対策を講じます.

危険な蜂群を破壊する

蜂群の安楽死は残酷に見えるかも知れませんが,その巣箱の設置場所,通行人の危険など多くの要素を考えると,もっとも安全なやり方なのだとおもいます.

日中に上置き巣箱を取り除き,夕刻,外勤蜂の帰巣後に巣門を閉めます.メッシュの開放式底部のときは下にはダニ用トレイを差し込み,巣箱を締め切ります.ガソリン1/4パイント(約0.14リットル)を巣枠の上に置かれたクラウンボードの開口部から蜂児巣箱に流し込みます.このとき熱い燻煙器が近くにあればガソリン引火の危険が大きいので十分に注意を.数秒のうちに音が止んで,蜂がもう死んだとわかります.養蜂家は翌朝に戻ってくれば,ガソリン臭が消えているので,巣箱の後片付けできるでしょう.

蜂群を移動する

蜂群を隔離された別の蜂場に移すことも考えられます.ですがこれは単に問題を移動させるだけであり,元々蜂群の気性を荒くした原因がその環境にあった場合以外は,適切な選択肢と言えません.

蜂群を分割する

ヌックス巣箱は女王蜂を養成するために使われる

大きな強群は防御性を極端に高める場合があり,シーズン開始時には小さくておとなしかったものが建勢するに従ってその性格があらわにします.強群を分割していくつかのヌックスに作り替えるのは良い対策です.とくに旧女王蜂を廃して,各小群によりよい性格の女王蜂から生まれた新女王を入れると良いでしょう.(訳注:ヌックス,またはニュークリアススコロニーとは大きな蜂群から分割して作られた蜂の小群をいう.通常サイズよりも小型の巣箱=ヌックスハイブに入れられて,それぞれに女王蜂も加わる.)