columnひとみの本棚

おだやかな陽ざしの中、元気に飛び戻ってくるミツバチの羽音を巣箱のそばで聞いたことがありますか? ミツバチやその他のハナバチ類は、日本はもとより世界の多様な自然の中で、その環境を保全し、人々の暮らしを豊かにする働きを担っています。
「Harmony on Diversities」いろいろな植物と動物が、本来のいき方をつづけ、豊かに持続的に、響きあいながら命をつないでいける環境。ミツバチもそんな環境を求めています。ヒトとの関わりがどの昆虫よりも長く多様な、ミツバチとその養蜂について考えてみましょう。

榎本ひとみ
アジア養蜂研究協会(AAA)設立時より21年間事務局コーディネーターを務め、アジア各国(オセアニア、中東を含む)で1994年より隔年開催された大会の準備などで、各国関係者と交流、多様な養蜂事情を学んだ。現在は役員。またAAA会報「Bees for Development Journal」や玉川大学ミツバチ科学研究センター発行の季刊誌「ミツバチ科学」などを通じて、欧米の関係組織とも交流、国際養蜂協会連合(APIMOMDIA)国際養蜂会議に数回出展、参加した。

6月26日, 2023年

送粉者週間によせて

 送粉者週間/Pollinator Week は米国で毎年この時期に,植物の花粉交配を手助けしている昆虫や鳥類などが健康に生息していけるように私たちも考えようと設けられた国の記念日です.

送粉者に関心を持つ人は誰でも活動に参加できます.ミツバチは代表的な送粉者であり,関係団体が毎年いろいろな形で送粉者週間を祝います.

写真は今年ミツバチ関連情報を養蜂関係者にわかりやすく伝える活動をしている Bee Informed Partnership が,北米でカナダとメキシコ間の渡りをする有名なモナークチョウ(オオカバマダラ)の保護活動をする Farmers For Monarches と共同制作したポスターを和訳したものです.

米国ハチミツ委員会 (National Honey Board )はハチミツを利用する購読者が多そうなBake Magazine に以下のように寄稿しています.

大好物のフルーツ,野菜,それにナッツなど米国人が食べる食品の1/3はミツバチの花粉媒介により生産される.彼らの大きな貢献を意識して,それに感謝するのが6月19日から25日の送粉者週間である.

ミツバチは特に活発なポリネーター/花粉媒介者/送粉者だ.彼らの生息場所を守る活動に参加し,健全な生態系の維持を日々意識することは,この特別な一週間だけでなく,一年中つづく有効な支援となる.食品,飲料業界はミツバチ抜きではまったく面白みがなくなる.世界の食品ビッグブランドで使われる食材の多くがミツバチの花粉媒介で生産されているのだ.

米国ハチミツ委員会が紹介しているミツバチや他の送粉者をたたえる5つの方法は:

1.在来種の植物を植えよう:在来種ならその地域の気候や土壌によくなじんでいるので,育てて維持していきやすい.送粉者の食糧と生息場所としても最適.

2.開花期が重ならない植物を数種選んで育てよう:送粉者の生育時期を通じて,彼らに必要な栄養を供給する多彩な花が求められる.開花期が集中しないように配慮し,多様な花が次々に咲き続けて,送粉者が長期間花蜜と花粉を安定して得られるように考えよう.

3.良い生息場所を増やそう:送粉者が採餌の間に休息,営巣する場所が必要になる.庭の一隅にあまり手入れをしない場所を設け,整理した枝を積み重ねるなどすれば送粉者の避難所ができる.

4.殺虫剤の使用をさけて:殺虫剤は送粉者に有害で,庭の生態環境をくずすかもしれない.コンパニオンプラントの利用や害虫は手で除去するなどの,より自然な手段を活用すれば,あなたの庭が健康で有害な化学物質のない送粉者が頼れる場所になっていく.

5.給水場の提供を:送粉者も人間と同じように水が必要だ.渇きを癒やし,また体温の調整にも不可欠である.飲み水と暑い日の熱冷まし用に,浅い皿か鳥用の水盤にきれいな水を入れておきたい.

送粉昆虫は日本でも生息適地が減って,都会ではそれらの姿を見る機会がなかなかありません.自分でもできる少しの配慮で送粉者を応援したいです.