結晶化の種となるハチミツ
あなたが作る柔らかく結晶したハチミツが確実に,細かな結晶の舌触り滑らかなものになるように,ひと手間かけるやり方である.放置してがちがちに結晶したハチミツをなんとか望ましい品質のものに修正したいときの対処法である.
「結晶種」はあらゆるハチミツを強制的に結晶化する性質のものではなく,自然に結晶しようとしているハチミツで形成される結晶粒の大きさを決めるのだ.フルクトースの多いハチミツに入れるのはピントはずれ.本質的に結晶しやすい,つまりグルコーズが多いハチミツに加えてこそ効果がある.
1.5kgの微細結晶ハチミツを,溶かしたハチミツ15kg入りのバケツに加えれば,添加した微小結晶が種となって全体が細かく結晶するだろう.種ハチミツの分量は全量の約1割.
初心者に多い誤りが巣板から抽出したばかりのハチミツを,喜び勇んで直接販売用の瓶に入れてしまうことだ.その後でハチミツが瓶の中で結晶化するかしないのか,どの瓶でも結晶が同程度に進むのか,瓶により違いがでるのか,また微細な結晶かざらついてしまうかなど,なにも考えないままに.
まず自然な粒状化を試験しよう
自分のハチミツが結晶するかどうか調べる方法だが,巣板から抽出後バケツに15kgづつ貯蔵し,3か月後どのバケツに結晶ができているか,結果を見てみよう.結晶がない,あるいは一部だけが結晶化したものはクリームハチミツ向きではないので除外し,液状ハチミツとして扱えばよい.
ハチミツが微小で滑らかに粒状化していたら,結晶種の添加は不要である.そのまま柔らかく結晶したハチミツ生産工程を進められる.しかし結晶が固く荒い状態の場合は,一度加熱してハチミツを溶解したうえで結晶種を入れる作業が必要となる.
結晶種ハチミツによる工程
- 60℃の加温庫内にいれて,ハチミツを溶かす.私が使っているのは100ワット電球2灯による加温で,15kgバケツ1個分の溶解に約10時間かかる.
- 電気オーブンも加温庫として使えるが,あらかじめ温度計を使って,オーブンの温度設定を検査すべきだろう.低温の温度設定が正確でないものが多いのだ.我が家にあるオーブンは目盛りが70℃を示していても,実際にはまだ60℃だった.オーブンではバケツ1個分を完全に溶解するのに5時間かかる.定期的に様子を見よう,必要以上に長くハチミツを加熱したくはないはずだ.
- 完全に結晶が溶解した後,約30℃になるまで冷ます.
- 500g瓶入りの細かく結晶したハチミツ3本を加温し,結晶種とする.電子レンジで1瓶15秒程度,金属の蓋はしたまま加熱.ハチミツが柔らかになるまでで,液体化するほど加熱してはいけない.
- 結晶種ハチミツ5kgを15kgの溶かしたハチミツに入れる.へらで瓶内のハチミツを残らずバケツに加え,全体をよく混ぜる.私は業務用の丈夫なポテトマッシャーで攪拌している.
- ハチミツを再結晶させる.普通3週間後には微細結晶粒でしっかり固まったハチミツになる
- 次の工程に進む
15kgバケツによるクリームハチミツ製造工程
- 細かい結晶で固まったハチミツのバケツを40℃の加温庫内で約8時間温め,
柔らかくなったが,まだ液状がすすまない時点で止める. - 状態はバケツの側面を押して確かめよう.
- ケーキ用ナイフでハチミツをあらかじめ切り分け,つぶしやすくする
- 業務用の丈夫なポテトマッシャーでハチミツの塊をこわし全体を柔らかくする.
ちょっとした力仕事になるが. - 急いて瓶詰すれば,柔らかくなめらかに結晶したクリームハチミツ瓶の完成である.