養蜂家の作業効率には,どんな大きさの燻煙器を使い,それにどんな素材を詰めて燻煙剤として使っているかということが,大きく関わってくる.大型の方が点火しやすく,長時間消えずにいる.やけどを防止するガードがある方が使いやすい.燃焼させる素材しだいで,火が具合良く燃え続けるかどうか変わってくるだろう.
アメリカの有力な養蜂雑誌ビーカルチャーのウェブサイトで,燻煙器について養蜂家デビッド・マクフォン氏によるとても実用的な記事がでていましたので,一部をご紹介します.https://www.beeculture.com/smokers/
煙はなぜミツバチをおとなしくさせる効果を持つのか.煙がミツバチの感覚を鈍くするため,まっさきに煙を察知した門番蜂は警戒フェロモンを出すが,他の蜂はそれを感知できないという説がある.煙の最初の働きとして,一番ありそうだ.しかしながら別の説では,ミツバチは近くに火事がおきていて,巣に危険がせまっていると判断し,逃去に備えていそいで各自の蜜胃をハチミツで一杯にする.蜜胃がぱんぱんに膨らんでいては,刺針行動がとりにくく,内検作業をする養蜂家は刺される危険が低下するという.それゆえ巣箱を開ける前にまず巣門に煙を吹きかけ,数秒から数分待つことが奨励されるのだ.
作業時に手袋を使わない養蜂家は,自分の手にも煙を吹きかけよう.蜂に刺されたときにも,そこにひと吹き.蜂が発する警戒フェロモンのにおいを覆い隠すので,さらなる刺害を最小限に抑えられるだろう.巣枠の両端に煙をかければ,蜂がどいていくので両手でつまんで持ち上げるのに具合が良い.煙で蜂の動きを制御しようとするとき,良く燃えている燻煙器からほんの1,2回吹きかけるだけで良い.かけ過ぎると,逆に蜂が騒ぎ出してしまう.数箱の巣箱の内検を終える頃には,蜂を良く見つめて,蜂のたてる音を聞いていることで,どのくらい吹きかけるべきか,さじ加減がつかめてくるだろう.注意深くミツバチを観察し,平常な蜂群が煙に対してどんな反応をするのか学んでほしい.
今日ではステンレス製の燻煙器が主流で,昔使われていたブリキや亜鉛めっき鋼製にくらべて長持ちする.燃焼缶部分に何らかの外装やガードがあるものは,養蜂家が過熱部分に接触して指をやけどする危険を押さえられるので推奨したい.燻煙器の大きさは,世話をする蜂群数にあわせる.直径4インチ(約10.2cm),高さ7インチ(約17.8cm)の燻煙器(4×7)なら,一つの蜂場で5-10群を見る間,燃料の追加なしに使える.直径4インチ,高さ10インチ(約25.4cm)(4×10)サイズのものは10群以上用,または数カ所の蜂場を見て回るときに奨められる.