columnひとみの本棚

おだやかな陽ざしの中、元気に飛び戻ってくるミツバチの羽音を巣箱のそばで聞いたことがありますか? ミツバチやその他のハナバチ類は、日本はもとより世界の多様な自然の中で、その環境を保全し、人々の暮らしを豊かにする働きを担っています。
「Harmony on Diversities」いろいろな植物と動物が、本来のいき方をつづけ、豊かに持続的に、響きあいながら命をつないでいける環境。ミツバチもそんな環境を求めています。ヒトとの関わりがどの昆虫よりも長く多様な、ミツバチとその養蜂について考えてみましょう。

榎本ひとみ
アジア養蜂研究協会(AAA)設立時より21年間事務局コーディネーターを務め、アジア各国(オセアニア、中東を含む)で1994年より隔年開催された大会の準備などで、各国関係者と交流、多様な養蜂事情を学んだ。現在は役員。またAAA会報「Bees for Development Journal」や玉川大学ミツバチ科学研究センター発行の季刊誌「ミツバチ科学」などを通じて、欧米の関係組織とも交流、国際養蜂協会連合(APIMOMDIA)国際養蜂会議に数回出展、参加した。

5月06日, 2019年

見学旅行でハッタの養蜂基地へ その2

 朝8時に集合場所に行くと,やや古めのマイクロバスにすでに乗客がすし詰め.私は補助席に座らせてもらい,出発しました.片道5車線のフリーウェイをドバイまで.そこから右折して砂丘が目立つ高速道をさらにひた走ると,やがて茶色い岩山が見え始めました.もう一度右折して,ついに山岳地帯に入ります.山はわずかに緑色を帯びているけれど,植物はごくわずか.山肌にスイカからメロンくらいの大きさの穴がときどき見えます.正午過ぎに養蜂基地に到着.容赦ない真夏の暑さ.

 敷地内は灌水設備が整い,シドルハニーのナツメ属(Ziziphus)の木,サマルハニーのアカシア属(Acacia)の木などが周辺山間部より,かなり多く見られます.美しく涼しいメインコテッジで,英語組とアラビア語組にわかれ,まずANHB社の活動紹介ビデオを見て,防護服に身を包んだ後,屋外の蜂場施設見学へ歩き出しました.
 写真は,蜂群がおいてあるエリア(立派なタープで日陰を確保)で説明を受ける私たち.その上部左に見えるのが白い大テント風のメインコテッジ,右のテントは内検など見学者に経験させるためのあずまや,手前の白い箱は人工授精など,育種研究用施設です.近くには女王蜂養成用小型巣箱がずらりと並んでいました.

 この写真には小さい花粉団子を運び込む蜂の姿が.4月はサマル蜜の時期ですが,まだ早いのか,お腹を花蜜で大きく膨らせて重そうに着地する姿は見られず.
 アラブ各国では暑さと蜜枯れのため,蜂群を年間維持できない状態が一般的です.年に2回,シドルとサマルの開花期にあわせて,エジプトから蜂を大量に空輸して採蜜するとのこと.だから蜂蜜の値段が今でもあれほど高いわけだし,蜂群の価格がこの先もっと高騰したら,どうしますか.偽和ハチミツの入り込む危険も大.その対策として,自国の環境に適した系統の育種研究が始まっています.ただ,非常に厳しい環境下にある蜂群のために,養蜂家が今すぐにできる糖液と代用花粉の給餌や近くて良好な水環境提供など,基本的な管理技術がまだ十分活用されていないのではないかとの見方もあります.