columnひとみの本棚

おだやかな陽ざしの中、元気に飛び戻ってくるミツバチの羽音を巣箱のそばで聞いたことがありますか? ミツバチやその他のハナバチ類は、日本はもとより世界の多様な自然の中で、その環境を保全し、人々の暮らしを豊かにする働きを担っています。
「Harmony on Diversities」いろいろな植物と動物が、本来のいき方をつづけ、豊かに持続的に、響きあいながら命をつないでいける環境。ミツバチもそんな環境を求めています。ヒトとの関わりがどの昆虫よりも長く多様な、ミツバチとその養蜂について考えてみましょう。

榎本ひとみ
アジア養蜂研究協会(AAA)設立時より21年間事務局コーディネーターを務め、アジア各国(オセアニア、中東を含む)で1994年より隔年開催された大会の準備などで、各国関係者と交流、多様な養蜂事情を学んだ。現在は役員。またAAA会報「Bees for Development Journal」や玉川大学ミツバチ科学研究センター発行の季刊誌「ミツバチ科学」などを通じて、欧米の関係組織とも交流、国際養蜂協会連合(APIMOMDIA)国際養蜂会議に数回出展、参加した。

10月24日, 2021年

地球各地で極端な気象現象発生  その1

 養蜂と一般的な家畜飼育との大きな違いは,巣箱で飼われていても,ミツバチが自由に外に飛び出していけることでしょう.厩舎から一歩も外に出ることなく,毎日与えられる飼料をたべて育つ牛の暮らしと比べてください.手近な給水場所が用意され,蜜枯れ時期に糖液給餌を受けることもありますが,基本的にミツバチは巣の周囲の自然環境から自分たちで花粉と花蜜を集めて暮らしています.

 だから地域の環境変化には大きな影響を受けやすく,経験豊富な養蜂家でも,毎年変化する情勢に一喜一憂するわけです.

英国の養蜂雑誌Bee Craft 2021年10月号で編集長が,今年はこれまでのところ,北半球の多くの養蜂家にとって難しい年だったようだと伝えました.

トルコ西部の地中海沿岸地域とギリシャの多くの島々,イタリア,スペインそれにアルジェリアでは高温と乾燥から山火事が次々発生して,多数の蜂群が失われた.

ギリシャ,エヴィア島のある養蜂家は,飼養する130群のうち80群を失ったと,フランス24テレビで話していた:「私は10歳の時からミツバチを飼ってきました.もう以前のような養蜂は私の代にはできません.ここの松林が元に戻るまで,とても私は生きていられない.50年はかかるでしょう,仮に松が復活するとしてもね.」

エヴィア島の松林はギリシャの甘露蜜の40%を生産しているとのこと.ギリシャの首相は,大規模な山火事の消火活動がうまくいかなかったことを公式に陳謝し,消失した松林は全域を再び植林することを約束,アッティカ(アテネ周辺地域)とエヴィア島に対して£4.2億(GBP)の総合援助予算を承認した.

一方,フランスでは今年の7月,8月に低温と長雨が続いた.約7万名の国内養蜂家にとって,今年は暗黒年となった.冷たい雨ばかりの夏でハチミツはほとんど収穫できず,国の緊急援助を求める声が上がっている.多くの地域で生産量は例年の半分以下にとどまると報告された.

英国では北部,とくにスコットランドの今年の養蜂状況は良好,あるいは格別良好である.一方南部では,地域によりばらつきが見られ,収穫がゼロとなっている養蜂家もいると聞いた.

写真はトルコ西部,エーゲ海沿岸部に広がる松林で,アリマキやカイガラムシの甘露をミツバチが集めて作る甘露蜜を収穫するための蜂群と,松のイラスト入りラベルで販売されている甘露蜜です.甘露蜜はヨーロッパの寒い方でも伝統的に生産されて,人気があり,トルコからEU圏に大量に輸出されます.