ミツバチが食べるものは花蜜 (炭水化物) と花粉 (タンパク質) です.明解ですね.
でももう少し細かく言えば,ミツバチの健康維持に必要な栄養素はアミノ酸,脂肪,ミネラル,およびビタミン類です.それぞれについてみてみましょう.
炭水化物
花蜜を集め,ハチミツへと濃縮・熟成していき,冬に備えて貯蔵する.炭水化物はミツバチのエネルギー源です.コロニー内に食べるべき炭水化物がなかったら,ミツバチの命は数日と持ちません.近年コロニーの越冬率が低下して大きな問題になっていますが,その最大の要因は炭水化物の不足です.ハチミツであれ砂糖の給餌であれ,越冬中に蜂群が有効に使える炭水化物がなくなれば,あっというまです.ミツバチは巣の仲間から要求されれば,自分の胃にあるハチミツを独り占めせずに,口移しで分け与えます.そうして群全体が一斉に飢え死にしてしまうのです.蜜源植物の流蜜が不十分だと,蜂群は荒くなり,育児,花粉採餌,巣内の衛生行動などのコロニーを健全に維持する大切な行動が低下します.
タンパク質
タンパク質は女王蜂が産卵し,孵化した幼虫が成蜂にまで成長するために,さらに成蜂の健康にも必要不可欠なものです.タンパク質を供給してくれるのは花粉なので,ミツバチは様々な花から花粉をあつめ,それを脚の花粉篭に団子状にまとめて巣に持ち帰ります.コロニーに必要なタンパク質の量は季節や天候により,またそのコロニーがいる蜂場周辺の植物資源により変わります.花粉が含むタンパク質の割合が重要なポイントで,その多少により花粉の品質は優劣がつけられます.成分中の粗タンパク質の割合が20%以下であれば,その花粉はミツバチの食糧としては低品質なのです.高品質といえるのはタンパク質を30%程度含有する花粉です.品質の高低がどうであれ,コロニーに必要なだけの量のタンパク質を入手できないときは,深刻なタンパク質不足状態となり,その結果,蜂児の生育数は減少し,成蜂となった働き蜂の寿命が短くなります.