columnひとみの本棚

おだやかな陽ざしの中、元気に飛び戻ってくるミツバチの羽音を巣箱のそばで聞いたことがありますか? ミツバチやその他のハナバチ類は、日本はもとより世界の多様な自然の中で、その環境を保全し、人々の暮らしを豊かにする働きを担っています。
「Harmony on Diversities」いろいろな植物と動物が、本来のいき方をつづけ、豊かに持続的に、響きあいながら命をつないでいける環境。ミツバチもそんな環境を求めています。ヒトとの関わりがどの昆虫よりも長く多様な、ミツバチとその養蜂について考えてみましょう。

榎本ひとみ
アジア養蜂研究協会(AAA)設立時より21年間事務局コーディネーターを務め、アジア各国(オセアニア、中東を含む)で1994年より隔年開催された大会の準備などで、各国関係者と交流、多様な養蜂事情を学んだ。現在は役員。またAAA会報「Bees for Development Journal」や玉川大学ミツバチ科学研究センター発行の季刊誌「ミツバチ科学」などを通じて、欧米の関係組織とも交流、国際養蜂協会連合(APIMOMDIA)国際養蜂会議に数回出展、参加した。

5月10日, 2020年

ビーズフォディベロップメントからの手紙 その1

 美しく素晴らしいお天気の5月になりました.ところが今年は新型コロナウイルス対策で私たち人間は活動が制限されており,ミツバチの方がよほど遠くに自由に飛び回っています.
 本当にそうなのです.イギリス・ウェールズのモンマスにある私たちの活動拠点でこの手紙を皆さんあてに書いていたら,分蜂群が飛来して,建物の横に置いてあるビーハウスに落ち着きそうです.

 (Facebook の Bees for Development, 5月3日のポストビデオをぜひご覧ください.ビーハウスは養蜂用巣箱ではありません.野鳥のために庭や林に巣箱をかけるのと同様に,野生ミツバチ群が自由に居心地よく暮らす場所を提供しようというものです.ミツバチが分蜂して新しい営巣先を探すときに,探索蜂が吟味して望ましいと判断する閉鎖空間の大きさに設計された箱で,内部も工夫してあって,ミツバチの行動研究で世界に知られたコーネル大学のT.D. シーリー教授のお墨付きです.)
 ここ数日,探索蜂がビーハウスを訪れていることに気づいていましたが,どうやらこの分蜂群はついに衆議一決して,新居に皆でやってきたようです.
 (シーリー教授の「ミツバチの会議」をお読みになりましたか?分蜂群が女王蜂と共にこれまで暮らした巣箱を旧女王蜂とともに飛び出して,仮の場所に集合し,探索蜂が移住先として探してきたいくつかの候補から,最終的に一つを選ぶまでのプロセスが詳しく分かりやすく述べられています.)
 私たちは養蜂技術を伝えるときに,分蜂群の待ち受け巣箱は地面から2メートル以上高い場所に設置すべきと言っているのですが,このビーハウスはサンプルとして地面ちかくに置いていました.しかもまわりに建物が建ち並び,ミツバチの営巣場所として最適とはいえません.でも,ここを選んでくれたミツバチコロニーを心から歓迎します.