columnひとみの本棚

おだやかな陽ざしの中、元気に飛び戻ってくるミツバチの羽音を巣箱のそばで聞いたことがありますか? ミツバチやその他のハナバチ類は、日本はもとより世界の多様な自然の中で、その環境を保全し、人々の暮らしを豊かにする働きを担っています。
「Harmony on Diversities」いろいろな植物と動物が、本来のいき方をつづけ、豊かに持続的に、響きあいながら命をつないでいける環境。ミツバチもそんな環境を求めています。ヒトとの関わりがどの昆虫よりも長く多様な、ミツバチとその養蜂について考えてみましょう。

榎本ひとみ
アジア養蜂研究協会(AAA)設立時より21年間事務局コーディネーターを務め、アジア各国(オセアニア、中東を含む)で1994年より隔年開催された大会の準備などで、各国関係者と交流、多様な養蜂事情を学んだ。現在は役員。またAAA会報「Bees for Development Journal」や玉川大学ミツバチ科学研究センター発行の季刊誌「ミツバチ科学」などを通じて、欧米の関係組織とも交流、国際養蜂協会連合(APIMOMDIA)国際養蜂会議に数回出展、参加した。

3月29日, 2023年

ハチミツ錬金術?

タイ北部チェンライの養蜂家の展示

欧州連合(EU)に輸入される蜂蜜の約半数が、水で薄められたり、安価なシュガーシロップを混ぜられたりしているとの報告書が3月23日、公表されました.EUに輸入される蜂蜜320品を検査した結果、46%に蜂蜜以外の混ざり物が発見されたそうです.純粋な蜂蜜に代わり安価な材料を追加するのが最も一般的,また表示ラベルで原産地を偽るといった産地偽装も見られたとのこと.<AFP>

Graham Kingham and Joe McGuckin  BeeCraft Match 2023より

錬金術は中世の時代に金を化学的に他の物質から作ろうとした試みです.私たちが現在手に入れられる金といったら「liquid gold/液体の金」,つまりハチミツでしょう.残念ながら現代にもあやしい錬金術を試みる人はいて,ハチミツよりはるかに安いコーンシュガー(コーンスターチを原料につくられた甘味料)を使った偽和ハチミツを本物のハチミツと称して儲けようとしています.

1896年発行の Bee-keeping Practical and Scientific という本でアメリカ産コーンシュガーを加えて水増ししたハチミツに言及しています.それより前から横行していたのでしょう.

チェンマイ養蜂企業の展示室.多様な製品が並ぶ

巣蜜での販売は古くからありましたが,ミツバチが蓋をした巣板そのままなら,本物のハチミツに間違いないので人気が続くのでしょう.

今日,精密な検査方法が開発されていますが,費用は高いです.かわりにだれでも家庭で気楽に試せる偽和ハチミツ判別法をご紹介しましょう.

インターネット上でハチミツの純粋さを確かめるための方法が色々提案されていますけれど,科学的に信頼できるものは多くありません.そこで養蜂経験のある自分たちで試して,役に立ちそうな偽和ハチミツ判別法を探すことにしました.スーパーで安く売っていたハチミツ2種とNZ産マヌカハニー,それに自分で生産したハチミツも対照として加えて実験を行いました.

良さそうな判別法を以下にあげました.ちなみに自家製ハチミツとマヌカハニーは今回すべての試験で本物と判別されました.火を使う場合は特に注意してください.