columnひとみの本棚

おだやかな陽ざしの中、元気に飛び戻ってくるミツバチの羽音を巣箱のそばで聞いたことがありますか? ミツバチやその他のハナバチ類は、日本はもとより世界の多様な自然の中で、その環境を保全し、人々の暮らしを豊かにする働きを担っています。
「Harmony on Diversities」いろいろな植物と動物が、本来のいき方をつづけ、豊かに持続的に、響きあいながら命をつないでいける環境。ミツバチもそんな環境を求めています。ヒトとの関わりがどの昆虫よりも長く多様な、ミツバチとその養蜂について考えてみましょう。

榎本ひとみ
アジア養蜂研究協会(AAA)設立時より21年間事務局コーディネーターを務め、アジア各国(オセアニア、中東を含む)で1994年より隔年開催された大会の準備などで、各国関係者と交流、多様な養蜂事情を学んだ。現在は役員。またAAA会報「Bees for Development Journal」や玉川大学ミツバチ科学研究センター発行の季刊誌「ミツバチ科学」などを通じて、欧米の関係組織とも交流、国際養蜂協会連合(APIMOMDIA)国際養蜂会議に数回出展、参加した。

12月26日, 2020年

スズメバチ騒動 その4

ワシントン州農業省(WSDA) オオスズメバチ対策チームは派手な報道後,関心を持つ人が不用意にオオスズメバチを刺激することを懸念して,注意書きをだしました.日本の専門家小野正人先生があげている注意事項もここに加えておきます.

注意-オオスズメバチのそばでは気をつけて

オオスズメバチのそばでは最大限の注意をするように.オオスズメバチの刺針はミツバチのものより長く,従来この地域に生息しているどんなハナバチ類,アシナガバチ類よりも危険である.一般的な養蜂用防護服はオオスズメバチの刺害から逃れるには不十分で,これで安全に身を守ることはできない.
もしもオオスズメバチのコロニーを見つけたら,自分で除去や根絶を試みてはいけない.即座にWSDAに報告のこと.ハナバチ類やアシナガバチ類の刺害にアレルギーのある人はだれであれ,決してオオスズメバチに近づいてはならない.

スズメバチから身を守るために:

最後にスズメバチから身を守るための工夫について、お話ししましょう。スズメバチに刺された事故のほとんどが巣の近くで起きています。歩いていて身の回りをまとわりつくようにスズメバチが飛び始めたら、近くに巣がありその方向に近づいていると思って下さい。決して、その蜂を手で払いのけてはいけません。 

万が一、誰かが巣を刺激してしまった時には、黒など色の濃いところに攻撃が集中するので、頭髪を淡い色の帽子などで隠し、着衣も白系のものを着ていると被害を受けるリスクを減らすことができます。

また、スズメバチは香りにとても敏感に反応します。警報フェロモンの成分やそれに近い香りを身につけていると攻撃を受けてしまう可能性があるので、それにも留意するのが賢明です。

  もし、刺されてしまった場合には、その場所から遠くに離れ、刺された部位を指などで押さえて、毒液を体外に絞り出します。その際、きれいな水で洗い流しながら行うと効果的です。体全体に蕁麻疹がでる、血圧が下がる、息苦しいなどの全身症状がでるようであれば、アナフィラキシーショックが発症した可能性があり、命に係わる事態ですので、一刻も早く、皮膚科やアレルギー内科の医師の診断を仰がなければなりません。

 人間の生活圏内に大きなスズメバチの巣を造らせないことが、スズメバチの被害を予防し、彼らとの共存を図る、もっとも効果的な方策です。それには、スズメバチの巣の早期発見と駆除が大切です。5月、6月の小さな巣を駆除するのであれば危険もほとんどありません。

 この点、とくに近年では、人の眼の行き届かない盲点となる空き家が増加傾向にあるようなので心配です。管理される方は、大型連休のときなどに見回り、営巣の初期段階で適切な処理を行い,安全を保持することも大切です。それには、近隣の住民の間での協力と自治体の支援が有効になるでしょう。

来年が人々にもミツバチにも,恵み多き良き日々になりますように.