columnひとみの本棚

おだやかな陽ざしの中、元気に飛び戻ってくるミツバチの羽音を巣箱のそばで聞いたことがありますか? ミツバチやその他のハナバチ類は、日本はもとより世界の多様な自然の中で、その環境を保全し、人々の暮らしを豊かにする働きを担っています。
「Harmony on Diversities」いろいろな植物と動物が、本来のいき方をつづけ、豊かに持続的に、響きあいながら命をつないでいける環境。ミツバチもそんな環境を求めています。ヒトとの関わりがどの昆虫よりも長く多様な、ミツバチとその養蜂について考えてみましょう。

榎本ひとみ
アジア養蜂研究協会(AAA)設立時より21年間事務局コーディネーターを務め、アジア各国(オセアニア、中東を含む)で1994年より隔年開催された大会の準備などで、各国関係者と交流、多様な養蜂事情を学んだ。現在は役員。またAAA会報「Bees for Development Journal」や玉川大学ミツバチ科学研究センター発行の季刊誌「ミツバチ科学」などを通じて、欧米の関係組織とも交流、国際養蜂協会連合(APIMOMDIA)国際養蜂会議に数回出展、参加した。

11月04日, 2019年

アピモンディア2019で見たもの聞いたもの その1

 アピモンディア2019 第46回国際養蜂会議は9月8-12日に,カナダ東部,ケベック州モントリオールで開催されました.134カ国から合計5,500名ほどが参加し,口頭発表は320題,ポスターも360題以上.ポスター会場がシンポジウム会場に隣接し,発表者と見学者の意見交換が盛んに行われていました.
写真はアピエクスポ会場で2年後,ウファ(バシコルトスタン共和国)での会議を宣伝するロシアのスタンド.公式ウェブサイトでは,盛会だった会議の様子が大量の写真と動画で公開されています.https://www.apimondia2019.com/gallery/

 アピモンディアには,養蜂経済,ミツバチ生物学,ミツバチの健康,養蜂資源・花粉媒介,養蜂技術,アピセラピー,養蜂村落開発の7学術委員会があり,国際養蜂会議では7名の委員長を中心に,申し込みされた発表要旨を審査分類し,分科会ごとにシンポジウム,ラウンドテーブル,ワークショップなどを開催してきました.モントリオールでは各セッションのテーマが早期にはっきりと打ち出され,2,3の委員会共催やOIE(国際獣疫事務局/世界動物保険機関)によるシンポジウムなど,多彩で充実した学術プログラムが組み立てられた成果でしょう,多くの聴衆が集まりました.
 大規模な会議に関わる大量の情報が,開催直前まで随時更新公開され,参加予定者がそれをインターネット経由であらかじめチェックできるとは,なんという進歩でしょう.古い話で恐縮ですが,20世紀のアピモンディアでは郵便で要旨とともに発表申し込みをすると,開催の数ヶ月前に発表の可否をしらせる返事がエアメールで届き,さらに口頭発表か,ポスター発表か,また予定セッション名と日時も一応書いてありました.口頭発表はまだパワーポイントの時代ではなく,上下,表裏を慎重に揃えたスライド写真一式をケースに入れて,大切に持っていくのでした.現地の会場で受付を済ませると,重たくて厚い要旨集がもらえます.早速それを開き,自分の発表がどのセッションの何番目になっているか,何日の何時頃,どの部屋と書かれているか,すべて確認できれば一安心.発表しない参加者も毎日重たい要旨集を持ち歩いて,聞きたい講演の場所と時間を確認したものです.でも重くかさばる要旨集を帰国の荷物に入れず,捨てて帰る参加者が多数いました.
 しかし21世紀のモントリオールでは,要旨集がVIP以外には配られませんでした.会議参加者全員が受け取る小ぶりのプログラム冊子には,学術プログラムの日時,部屋番号,講演タイトル,発表者氏名と国名の表示だけ.でも今やモバイルと wi-fi があれば,大会サイトにアクセスして,デジタル要旨集で検索することで,効率良く探している人名も研究トピックもヒットしますからね.何と言ってもケベック州では仏・英のバイリンガルで準備する義務があるのです.紙の無駄もへらしたかったでしょう.要旨集は今でもだれでも無料でダウンロードできます.https://www.apimondia2019.com/program/abstract-book/