columnひとみの本棚

おだやかな陽ざしの中、元気に飛び戻ってくるミツバチの羽音を巣箱のそばで聞いたことがありますか? ミツバチやその他のハナバチ類は、日本はもとより世界の多様な自然の中で、その環境を保全し、人々の暮らしを豊かにする働きを担っています。
「Harmony on Diversities」いろいろな植物と動物が、本来のいき方をつづけ、豊かに持続的に、響きあいながら命をつないでいける環境。ミツバチもそんな環境を求めています。ヒトとの関わりがどの昆虫よりも長く多様な、ミツバチとその養蜂について考えてみましょう。

榎本ひとみ
アジア養蜂研究協会(AAA)設立時より21年間事務局コーディネーターを務め、アジア各国(オセアニア、中東を含む)で1994年より隔年開催された大会の準備などで、各国関係者と交流、多様な養蜂事情を学んだ。現在は役員。またAAA会報「Bees for Development Journal」や玉川大学ミツバチ科学研究センター発行の季刊誌「ミツバチ科学」などを通じて、欧米の関係組織とも交流、国際養蜂協会連合(APIMOMDIA)国際養蜂会議に数回出展、参加した。

11月04日, 2019年

アピモンディア2019で見たもの聞いたもの  その3

 Miels d’Anicetは寒さに強い系統の女王蜂生産をメインにしています.翌朝ひろいソバ畑に置いてある蜂群を見学,霧雨に風が吹くかなりの肌寒さでしたが,咲き残りの花や大型給餌器(ドラム缶)に蜂が来ていました.かなり体色が黒めな系統です.ほかに無農薬有機栽培の農家と契約してポリネーション用に蜂を置いているそうです.
じつは温暖なカリフォルニアの,ワイン生産で有名なナパバレーでも春早く出荷できるように女王蜂を養成しており,さらに今後の気候変動に対処できるような系統も,研究機関と協力して開発中とのこと.すごいですね.

 多様なミード類や化粧品も商品化していますが,ハチミツに関しては極力加工処理をしない方針.採蜜時には加温室を使うが,なるべく販売時直前まで巣板に貯蜜の状態でおいておく方針.手作業で蜜蓋をかき落とし,大型の遠心器で巣板から絞ったら,ほとんどフィルターにかけずにそのまま販売用瓶やプラスチックバケツに入れて売りたいとのこと.まさにraw honey ですね.巣くずや花粉がどうしても多少入るでしょう,ショップに並んだ瓶では上部にしろい層を形成していました.そういうものを好む人むけの商品かもしれません.普通にきれいに仕上げたタイプも並列して売っていました.

 ハチミツは年により生産量が上下するので,安定経営のためミード(蜂蜜酒)や蜂ロウを使った化粧品の商品開発にも力を入れていました.むやみに養蜂規模を拡大するのでなく,より少数でより大きくねらい,地元の若者の雇用機会を多様にふやすと.
 化粧品の説明をしてくれた奥様は少しも自慢しなかったけれど,いまや全部合わせて約100種類のミツバチ生産物製品ラインナップを約300店に卸していて,さらにネット販売では海外からの注文も多く受けているようです.

 立派な醸造設備とオーク樽がならぶ酒蔵で,若き経営者の義弟が自ら醸造する,シェリー風やフルーツで風味付けしたものなど色々な種類のミードを,見せてくれました.原料はraw honeyで,そのナチュラルな夾雑物を販売用ボトルには入れないけれど,発酵熟成用樽まで残しているとのこと.1泊2日の訪問中に,この酒蔵訪問と2回の食事の際を含め,色々なミード類を試飲させていただきました.ワインサイズの瓶で,同じように飲める軽めの仕上がりが多く,私も1本買って,大切に持ち帰りました