ハチミツは花蜜からつくられ,その過程で色々なことが起きるが,最終的に水分を20%以下に減少させている.約35℃の巣内での作業であり,ミツバチは余分な水分を飛ばし糖度を高めていき,冬の貯蔵期にもハチミツ中の酵母を発酵させないほどの安定性を確保している.
湿度が十分あると,酵母は増殖してハチミツの品質を劣化させる.完熟ハチミツ中には糖類を液化させておくだけの水分があればよく,過剰にあってはいけない.ハチミツの場合,水分中の糖溶液は飽和状態に近いと言われる.余分な水はなく,だから酵母による発酵,品質劣化も起きない.小さなミツバチのなんと賢いことか!
自然な過程としての結晶化
ハチミツが巣箱から取り出され冷えていくと,巣板内,バケツ,あるいは瓶,そのどこにあろうともハチミツは’過飽和状態‘になる.つまり温度が下がれば相対的に糖分を液化しておくだけの水分が不足した,物理的に不安定な状態になるのだ.
その状態を安定化するために,ハチミツ中の一部またはすべての糖類が液体から結晶に変化する.これを結晶化,顆粒化,setting(固形化)という.ハチミツ中の主な糖類はフルクトース(果糖)とグルコース(ブドウ糖)で,グルコースはフルクトースより溶けにくい.そこでグルコース含有量が多いハチミツほど速やかに結晶して粒状のハチミツに変化していく.
この生成の過程は強固な足場作りに似ており,小さな結晶がたがいに連結してしだいに固い結晶体となっていく.だから自然に結晶したハチミツはあれほど固くなるのだ.
一方,柔らかく結晶したハチミツの中にも結晶はまだあるが,途中でハチミツを撹拌し,連結した大きな結晶体を物理的に壊してある.結晶したハチミツをかき混ぜるには,連結を弱める程度にまで温める必要がある.こうして作ったクリームハチミツはいつまでも柔らかで,ジャムと同じように塗れるのである.
柔らかに結晶化させる過程 難しいのか?
そんなことはない.自然に結晶した瓶入り500gのハチミツで以下の実験をやってみよう:
- 金属製の蓋をしたまま,ハチミツ瓶を電子レンジに入れる
- 約20秒間,強く加熱して中身を軟化させる(ハチミツが液化するほど長時間加熱してはいけない)
- スプーンで中身をよくかき混ぜて結晶構造を分解する
- これで柔らかく結晶したハチミツができた
- 再び荒く結晶するか,微小結晶になるかはわからないが,柔らかな状態はかわらないだろう
注意:金属の蓋をしておくことで,電磁波が瓶の表面だけでなく中心部にまで入る.間違った神話はすぐに忘れよう.金属蓋の周りで火花は飛ばない.電子レンジの内部もみな金属製ではないか.