columnひとみの本棚

おだやかな陽ざしの中、元気に飛び戻ってくるミツバチの羽音を巣箱のそばで聞いたことがありますか? ミツバチやその他のハナバチ類は、日本はもとより世界の多様な自然の中で、その環境を保全し、人々の暮らしを豊かにする働きを担っています。
「Harmony on Diversities」いろいろな植物と動物が、本来のいき方をつづけ、豊かに持続的に、響きあいながら命をつないでいける環境。ミツバチもそんな環境を求めています。ヒトとの関わりがどの昆虫よりも長く多様な、ミツバチとその養蜂について考えてみましょう。

榎本ひとみ
アジア養蜂研究協会(AAA)設立時より21年間事務局コーディネーターを務め、アジア各国(オセアニア、中東を含む)で1994年より隔年開催された大会の準備などで、各国関係者と交流、多様な養蜂事情を学んだ。現在は役員。またAAA会報「Bees for Development Journal」や玉川大学ミツバチ科学研究センター発行の季刊誌「ミツバチ科学」などを通じて、欧米の関係組織とも交流、国際養蜂協会連合(APIMOMDIA)国際養蜂会議に数回出展、参加した。

11月13日, 2023年

カリフォルニア州への大規模な蜂群移動の様子 その2

米国養蜂家のおもな収入源はハチミツ生産よりも花粉交配になった.アーモンド生産者と契約を交わし,蜂群設置時にはミツバチの建勢・健康状態などの査察を受ける.写真:Honey Bee BMP 2018より

アーモンド農家の中には自分でミツバチを飼養管理する人もいるが,大部分の農家は養蜂家から送粉サービス用の蜂群を賃借している.

その需要に応えるために多くの養蜂家は各地からカリフォルニアをめざして,自分が管理する蜂群を1,000マイル以上長距離移動する.

(時間・労力・経費が嵩み,蜂群が望ましくない高温・低温の環境に長時間閉じ込められる危険もあります)

暖かなカリフォルニアでの越冬が有利と考えられたが,産卵が続けばダニも増え続ける.経費が嵩むようになった.

黄色矢印の太さは移動蜂群数に対応する;矢印の曲がり具合は目的地まで直進できず,迂回する輸送経路の状況に対応.USDA, Economic Research Service report, Honey Bees on the Move: From Pollination to Honey Production and Back, June 2021.

毎年繰り返されるこの長い旅路の典型的な例では北部グレートプレーンズ(ノースダコタ,サウスダコタ,モンタナ,およびミネソタ)を出発地として,カリフォルニアやさらに次の地域を目指していく.

アーモンドの開花期に合わせて,2017年7月1日から2018年1月1日までの期間中,推計38万4600群が北部グレートプレーンズからカリフォルニアに輸送されていた.

比較的近い西部や太平洋岸北西部からやってくる蜂群もいたが,遙か遠くの北東部や南東部からはるばると移動してきた群もあった.

ある養蜂家はアーモンド花粉媒介のために蜂群を2000マイル以上運んだと報告した.アーモンドと地域の他の作物の送粉をおえると,多くの養蜂家は北部グレートプレーンズに戻り,蜂群を休ませ,ハチミツ生産をめざす.

カリフォルニアアーモンド協会発行 ミツバチの正しい扱い方読本

アーモンドの結実には送粉生物による花粉媒介が必須です.カリフォルニア・アーモンド協会の冊子表紙写真でわかるように,同じバラ科の桃のように多数がほぼ一斉に開花.桃なら熟すまで残される実はごく一部でしょうが,アーモンドでは全部の花が結果することをめざすそうです.大量のミツバチによる集中的な送粉サービスがあってはじめて,アーモンド生産者が望む大量結実が実現できます.

近年は送粉生物にも配慮する必要を認識して,アーモンド生産者団体が会員に蜂群の扱い方を周知するようになり(左の写真),良い写真を今回は数枚拝借いたしました.

以前はポリネーションが終わると,農園内の巣箱移動が終わらないうちに,大型機械で農薬散布をはじめるなど多くの問題がありました.アーモンドだけの単一栽培から樹間に送粉昆虫が生息できる緑地をつくるなどの環境への考慮も見られます.