産卵は巣の中心部,温かく保たれた部分から始まります.掃除や育児をする若い蜂もまだ寒さには弱く,もっぱら暗い中心部で働きます.幼虫への給餌は24時間休みなく続けられて,常に新らしい食べものが十分に幼虫の口に入るように世話を焼きます.
20世紀の博士論文集から検索された1931年「ミツバチコロニーの生長に関わる要素の計測研究」からの情報として,“どの蜂児巣房にも産卵から巣房が蓋で閉じられるまでのあいだに,多数の育児蜂が合計約1万回訪れていた”,とありました.
春の気配に応じて,越冬中は休止していた産卵を女王蜂が再開し,順調に生み続けたとしても,成蜂の数が少なくて育児圏を十分に暖められないと,チョーク病発症につながります.春に産卵された蜂が外勤蜂として採餌にでるまでの日々は,秋に蓄えた貯蜜と越冬してきた冬蜂体内の蓄え,それに外勤蜂として働く冬蜂が持ち帰る花粉と花蜜を盛んに消費して,巣内を暖め,女王蜂と幼虫にたっぷりと食べさせ,さらに自分たちも働くために食べなければなりません.貯蔵食料は急速に減ります.やがて越冬して長く生きてきた冬蜂は死んでいきます.その前に春の蜂がどれだけ育つでしょうか.
やっと暖かになったと思ったら,急に蜂が減ってしまった,蜂群がだめになったという話を聞くことがありますが,こんな冬から春への体制変換の難しさが一因なのでしょう.春に順調に蜂群が伸びていけるように,養蜂家の管理をお願いします.