アメリカ西海岸,温暖なカリフォルニア州のセントラルバレーに広がる3千平方キロメートル以上のアーモンド農園では2月に開花が始まり,その花粉媒介を全面的に養蜂家が飼養するミツバチに依存しています.アーモンド農園は人出を省き,大型機械で効率よく作業をするために,広大な敷地に,アーモンドの木だけを育てていました.下草はすべて除草しており,アーモンドが咲く時期以外にはミツバチの採餌先が何もありません.
秋になると,百万群以上のミツバチを米国各地の養蜂家がカリフォルニアに輸送し,給餌や投薬などの管理をしながら冬を越します.しかし長距離の移動と目的地が冬で養蜂資源がないことから,ミツバチに,とくに育児蜂と幼虫に大きな負担がかかり,養蜂家には出費と労働が冬も続くことに.
育児蜂から供給される栄養の量と質は蜂群サイズに影響し,ひいては花粉媒介とアーモンドの生産量に響きます.アーモンドが開花する2月まで,養蜂家は特別ブレンドのタンパク質補助食糧を給餌してきました.しかし2年間の調査から,その補助食糧ではミツバチが必要とする栄養素を完全には補えていないことが判明.その上,補助食糧に含まれるタンパク質はミツバチが消化しにくいもので,約65%は未消化のまま排出されているそうです.
ミツバチヘギイタダニの感染だけでなく,養蜂シーズン中の良好な採餌先が急激に減少したアメリカでは,ミツバチの健康維持が難しく,越冬できずに死んでしまう蜂群が近年40%にもなります.元気なミツバチにアーモンド花粉媒介を万全にしてもらえるよう,アーモンド生産者側がミツバチ支援策として,農園内に地被植物として早春のミツバチ採餌先になる植物を植える活動を始めました.