columnひとみの本棚

おだやかな陽ざしの中、元気に飛び戻ってくるミツバチの羽音を巣箱のそばで聞いたことがありますか? ミツバチやその他のハナバチ類は、日本はもとより世界の多様な自然の中で、その環境を保全し、人々の暮らしを豊かにする働きを担っています。
「Harmony on Diversities」いろいろな植物と動物が、本来のいき方をつづけ、豊かに持続的に、響きあいながら命をつないでいける環境。ミツバチもそんな環境を求めています。ヒトとの関わりがどの昆虫よりも長く多様な、ミツバチとその養蜂について考えてみましょう。

榎本ひとみ
アジア養蜂研究協会(AAA)設立時より21年間事務局コーディネーターを務め、アジア各国(オセアニア、中東を含む)で1994年より隔年開催された大会の準備などで、各国関係者と交流、多様な養蜂事情を学んだ。現在は役員。またAAA会報「Bees for Development Journal」や玉川大学ミツバチ科学研究センター発行の季刊誌「ミツバチ科学」などを通じて、欧米の関係組織とも交流、国際養蜂協会連合(APIMOMDIA)国際養蜂会議に数回出展、参加した。

9月13日, 2020年

アーモンドとミツバチ その3 

 最新研究から二十日大根やカラシナの主根から土壌中の線虫防除成分が放出されることが示唆されました.これはアーモンドの木の健康改善に役立ちます.またアブラナ科のラピーニ(rapini / broccoli raab日本ではスティックセニョールの名で流通)は耐寒性があり,定植後6週で開花,側花蕾が多数でるので,花期が長い.ラピーニの花粉はミツバチに良く消化吸収され,必須アミノ酸を提供し,蜂病を抑制します.ミツバチは明るい黄色のこの花が大好きです.

 ミラーさんは話を続けます.「採餌植物をふやす活動はミツバチをその農園にとどまらせる効果を持つ.好天の日にはミツバチが熱心に開花したアーモンドに訪花して,花粉を集める.午後半ばまでにアーモンド花粉はほぼ集め尽くすだろう.その後は樹上から地表まで降りて,地被植物を訪れる.農園のずっと先まで飛んでいき,よその農薬散布したアーモンドで採餌してしまう危険を避けられる.

 アーモンド産業は持続的な養蜂業への要石といえる.毎年アーモンドの開花はミツバチがその年最初に自然界から得られる栄養なのだ.越冬中の色々な困難から,蜂群が回復していくのがアーモンド花粉媒介の期間であり,養蜂家はそこでの蜂群の送粉活動状況をみて,春から夏への養蜂シーズンの成功をもくろむ.

 蜂群と農園をともに持続的に維持するという考えはとくに新しくない.新しいことはアーモンド生産者が望ましい農業従事者であるかどうかを見る人々の目なのだ.生産者と養蜂家は環境に優しく,協働する自分たちの仕事をよく理解してもらいたい.春と夏の採餌植物をふやす活動こそは西海岸のアーモンド生産と,多くの農作物の生産を支える米国の養蜂業を持続可能なものにするものなのだから」.

 日本ではナタネなどアブラナ科植物が早くから咲き,ウメも続きます.給餌だけに頼らず,養蜂植物から良質な花粉を集められる環境をつくることが,ミツバチの健康を支えるのですね.