columnひとみの本棚

おだやかな陽ざしの中、元気に飛び戻ってくるミツバチの羽音を巣箱のそばで聞いたことがありますか? ミツバチやその他のハナバチ類は、日本はもとより世界の多様な自然の中で、その環境を保全し、人々の暮らしを豊かにする働きを担っています。
「Harmony on Diversities」いろいろな植物と動物が、本来のいき方をつづけ、豊かに持続的に、響きあいながら命をつないでいける環境。ミツバチもそんな環境を求めています。ヒトとの関わりがどの昆虫よりも長く多様な、ミツバチとその養蜂について考えてみましょう。

榎本ひとみ
アジア養蜂研究協会(AAA)設立時より21年間事務局コーディネーターを務め、アジア各国(オセアニア、中東を含む)で1994年より隔年開催された大会の準備などで、各国関係者と交流、多様な養蜂事情を学んだ。現在は役員。またAAA会報「Bees for Development Journal」や玉川大学ミツバチ科学研究センター発行の季刊誌「ミツバチ科学」などを通じて、欧米の関係組織とも交流、国際養蜂協会連合(APIMOMDIA)国際養蜂会議に数回出展、参加した。

5月04日, 2022年

ハチミツのこんなこと,ご存じですか? 

養蜂を村落開発に組み込んで,人々の生計を改善する活動を続けるNPOビーズ フォ ディベロップメント Bees for Developmentがハチミツの魅力をコンパクトにまとめています.ハチミツのこんなこと,あなたはご存じですか? 

ハチミツの事実 その1 

ハチミツは決して傷みません

密閉容器に密封されていれば,ハチミツは永遠にその市場価値を保てるごく限られた食料のひとつです.数千年前の古代エジプトの墳墓から見つかったハチミツが,まだ食べられる状態だったとの報告すらあります.

ミツバチが濃縮していったハチミツでは,それに含まれる水分の割合が低く,また自然な状態で酸性であるため,細菌の成長が抑制されています.さらにミツバチの胃で分泌される特別な酵素があり,これが分解されて細菌やほかの微生物の成長を抑える成分になります.

ハチミツの事実 その2 

ハチミツの歴史

ミツバチ巣板の化石が発掘されています.その最古のものは三百万年前に遡るそうです.

スペインの洞窟で見つかった壁画には,ひとりの人が崖の穴にあるミツバチの巣から蜜巣を取り出す様子が描かれていました.この洞窟壁画は一万五千年前のものといわれます.

私は2019年にアラブ首長国連邦で伝統養蜂の保存活動をする養蜂家に会いました.砂漠地帯に隣接する乾燥した岩山のガレ場に,小ぶりな横穴が多数あり,野生のセイヨウミツバチ亜種が営巣していたそうです.オイルマネーの大規模開発で営巣適地が激減するのを見て,保存活動を始めたとのことでした.

ハチミツの事実 その3 

ハチミツで生き延びよう

あなたが元気に過ごすために必要なすべての成分をもつ食品はあるでしょうか.知られているのは唯一ハチミツだけ.水分,ビタミン,ミネラル類,それに体にエネルギーを取り込むのに必要な酵素,すべてがハチミツに含まれます.

さらにプロポリスに含まれる抗酸化物質であるピノセンブリンがハチミツ中にもあり,この成分はヒトの脳の機能を向上させる効果を持っています.