columnひとみの本棚

おだやかな陽ざしの中、元気に飛び戻ってくるミツバチの羽音を巣箱のそばで聞いたことがありますか? ミツバチやその他のハナバチ類は、日本はもとより世界の多様な自然の中で、その環境を保全し、人々の暮らしを豊かにする働きを担っています。
「Harmony on Diversities」いろいろな植物と動物が、本来のいき方をつづけ、豊かに持続的に、響きあいながら命をつないでいける環境。ミツバチもそんな環境を求めています。ヒトとの関わりがどの昆虫よりも長く多様な、ミツバチとその養蜂について考えてみましょう。

榎本ひとみ
アジア養蜂研究協会(AAA)設立時より21年間事務局コーディネーターを務め、アジア各国(オセアニア、中東を含む)で1994年より隔年開催された大会の準備などで、各国関係者と交流、多様な養蜂事情を学んだ。現在は役員。またAAA会報「Bees for Development Journal」や玉川大学ミツバチ科学研究センター発行の季刊誌「ミツバチ科学」などを通じて、欧米の関係組織とも交流、国際養蜂協会連合(APIMOMDIA)国際養蜂会議に数回出展、参加した。

9月13日, 2020年

アーモンドとミツバチ  その2

 大規模な単一栽培により,アーモンド生産者は自然資源を不当にいためつけているとの見方が広まり,規制が強化されました.アーモンド業界は蜂群の健全育成を支援するため, 2011年以来113平方キロメートルに花蜜・花粉源植物を植栽する活動をつづけています.
全米随一の大規模養蜂家.ジョン・ミラーは,変化は常に起きると言われているが,養蜂とアーモンド農園の関係でもまさにしかりだ,とのべました.

 「ミラーハチミツ農場の記録を2003年にまでさかのぼると,当時のアーモンド花粉媒介料金は1群あたり45米ドルだった.2019年は平均200米ドルになっている.我が社の根拠地ノースダコタ州の風景も劇的に変わって,ここのハチミツ生産量がすっかり減った.ミツバチを健康に維持管理する経費がうなぎ登り.蜂群は増えにくく,ハチミツもとれない.養蜂家は蜂群をカリフォルニアに運び,アーモンド農家の求めに応じる.これは我々には必要な仕事だ.花粉媒介契約による収入はいまや,ハチミツからの収入を上回る.これが新しい事態なのだ.
 アーモンド農場の地面で大きな変化が進行中だ.アメリカ養蜂業の持続性をささえる方策なのだ.生産者達が早春に咲く,背の低い作物の育成を始めた.アーモンド開花見込み日の90日前頃に二十日大根やカラシナを播種すると,地表を覆うこれら地被植物は農園が休眠状態の時期に,主根を地中に延ばしていく.カリフォルニアでは冬が降雨の季節で,農園にも雨が降る.地被植物の主根は土壌を緩めていき,雨水は地表を流れ去るのではなく,地中にしみこみ,農園内にとどまる.土壌へのメリットは疑いようがない.地表から雨がしみこめば,アーモンド灌水用の地下水くみ上げは不要となり,土壌は元気を回復する.
 地被植物の開花中,窒素が植物から土壌に移動し,地味改善に寄与する.人々はハナバチなどが訪花する植物が満開に咲くのを喜ぶが,地被植物と土壌の健康,そしてポリネーターへの利益までは評価してくれない.農園内に生息するすべての花粉媒介昆虫は大きな利益をえるのだ.渡っていく蝶類,在来種や地中に営巣するハチ類のためにもなる.採餌植物をふやす活動は多様な生物を支援できるもので,養蜂家とアーモンド農家はそれをよく知っている.このことをより多くの人々に知っていただきたいと思う」.